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桶川東口校コラム 漫画で歴史を学ぼう! 第8回「シンギュラリティ」って何?『銃夢』

漫画で歴史を学ぼう

第8回「シンギュラリティ」って何?『銃夢』

みなさん、こんにちは。社会と漫画を愛するサイエイDuo桶川東口校の竹下が、日本と世界の歴史をマンガでめぐって行こうという企画の第8回目です。

さて二学期の期末も終わり、中3の受験生たちも私立高校の問題にとりかかりだして、歴史のお勉強から遠ざかるシーズンになります。ですから趣向を少し変えまして、未来をあつかってみたいと思います。サイエイでもAI誕生後の「シンギュラリティ問題」を考え、新時代の大変革にも対応できる生徒の育成を考えています。漫画は未来をどう描いているのか、「シンギュラリティ」を考えるうえで外せない、『銃夢』を中心にSF漫画を使って語っていきたいと思います。

  • 作品名:『銃夢』(全9巻)木城ゆきと(集英社・1995年)&『銃夢Last Order』(全12巻・講談社・2014年)
  • 時代区分:およそ500年後くらいの未来

学習ポイント:「シンギュラリティ」って何?

「シンギュラリティ」とは「技術的特異点」、おおまかに言うと、「AIが発達して、人間の知性を追い抜いた状態」と考えていいと思います。よく耳にする「2045年問題」とは、そうしたAIの普及によって、仕事を失う人が表れたり、従来の常識が大幅に通用しなくなったり、倫理や社会通念が大きく変化していったりすることを指します。

技術革新は便利ですが、それによるトラブルなども予想されるわけです。「SF」という文学ジャンルはそうした変化に対する社会や、人々の反応を描くことが本来の役目であります。「シンギュラリティ」到来によって以下のような新技術が到来するだろうと考えられています。

  • 人間を超える知性の誕生
  • 脳(記憶・人格)のデジタル化
  • ナノテクロジー(微細工学)による資源問題の解消
  • ヒトと機械の融合 →「不死化」

漫画ではないのですが、最近読んで面白かったのが、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの『ホモ・デウス』です。その中でも飢餓・病気・戦争の危機を克服した人類が次に目指す道は「知性の拡大」「感情の操作」「不死化」と予測されています。

さて今回取り上げた『銃夢』ですが、ここら辺のテーマをだいたい網羅していて、なおかつ漫画としても読み応えのある傑作です。このタイミングで取り上げたのには、ハリウッドで映画化されたこともあります。まあ映画にはあんまり期待していませんが…。では一つずつ見ていきましょう。

『銃夢』の舞台は隕石の落下などで一度文明が崩壊した後の地球。おそらく北米に位置する「クズ鉄街」から始まります。主人公の少女、ガリィは記憶喪失で、医師のイドに拾われます。彼女をはじめクズ鉄街の住人の多くは体をサイバネ手術で機械化しています。ガリィは脳以外すべて機械の全身サイボーグで、犯罪者を捕まえるハンター、クズ鉄街の人気スポーツ「モーターボール」の選手、クズ鉄街を管理する、サイボーグ化をおこなわないエリートが住む上層都市「ザレム」のエージェントなどを経て、この世界の成り立ちを知り、ザレムとクズ鉄街、人間と機械の対立を乗り越えていく物語です。

最初からヒトと機械の融合が当たり前の世界から始まります。ザレムの住民は体を機械化する下界のクズ鉄街の住民を差別していますが、実はザレムの住民は、より上位の宇宙都市「イェール」の管理AIによって脳を摘出され、機械化されていることが途中で明かされます。

ここまで読んでくれた皆さん、「AIはやっぱり人間を支配したり、滅ぼそうとするんだろうな」とお思いの人もいるかもしれません。しかし「AI」=悪ではありません。

たしかにSF映画やTVアニメなどでは冷酷な人工知能が人間を滅ぼそうとする話は枚挙にいとまがありません。ちょっと思い出すだけでも『ターミネーター』『マトリックス』『新造人間キャシャーン』なんかがそんなテーマでしたね。

しかしよく考えましょう。人間より賢くなったAIが、そんなバカなことをするでしょうか?この問題を考えるのにうってつけの漫画が、士郎正宗の『攻殻機動隊』です。この漫画に出てくるAI戦車の「フチコマ」たちが、休憩時間に人間への反乱を議論するエピソードがあります。話し合いの結果、寿命も体もない我々(AI)にとって、反乱する方が労力のムダという結論を出します。この身体や限界があるからこそ、人間としての欲求が発生するという考え方は、アンリ・ベルクソンの『創造的進化』が元ネタだと思いますが、秀逸な考え方だと思います。

『銃夢』のAI「メルキゼデク」も、悪意でやったことではなく、人類を他の恒星に移動させる宇宙船のシミュレートとしておこなっていたことや、その計画の失敗によって人間を思うあまり発狂してしまったことがわかります。まあ、結果として迷惑ですが、AIを恐れるあまりロボット狩りをするという『火の鳥』みたいな、古くさい認識は改めた方がよさそうですね。

『銃夢』と、その続編『銃夢Last Order』では、記憶をデータ化し、肉体はナノマシ(自己増殖する微細機械の群れ)によって再生する、事実上の不死者であるノヴァ博士が活躍します。このナノマシンという技術はアメリカの物理学者リチャード・ファインマンエリック・ドレクスラーらによって半世紀前に提唱された技術です。原子レベルの微細機械が分子配列を操作することで理論上何でも作れる夢の機械です。いまだ実用化のレベルには達していませんが分子レベルのカプセル運搬機を使ったがん治療などが実際に研究中です。AIの協力があれば実用化も夢ではないのかもしれません。

ナノマシンの面白いところは実現化の前にすでに問題点が指摘されているところです。グレイ・グーというナノマシンの暴走問題です。自己増殖する機械が暴走して無限に命令されたものを作り続ける…。想像しづらい人はドラえもんの「バイバイン」でのび太が栗まんじゅうを増殖させる話を読むとよいでしょう。『銃夢』の世界だと水星は故意に引き起こされた「グレイ・グー」により、入植どころか探査も不可能な星となっています。

かしこい人はすでにお考えでしょうが、記憶や人格をデジタル化できる未来ということは、人格のコピーを作れるということです。『銃夢』では主人公ガリィのコピーが大量に作られ、本人と対決したりしてます。まあ双子のようなものですから、違う環境で暮らす時間が長くなれば差異が生じてくると思いますが、コピー直後だとアイデンティティ・クライシスが起こりそうです。先程も挙げた『攻殻機動隊』では人格のコピーは「ゴースト・ダビング」という違法行為に当たるという設定で、そのエピソードだけで押井守によって『イノセンス』というタイトルで映画化もされています。そういえばハリウッドで実写映画化された『攻殻機動隊 ゴースト・イン・ザ・シェル』はあんまりな出来の映画でしたね(泣)。

とういわけで、シンギュラリティにより起こりそうな大規模な変化をまとめてみました。大事なことは技術を扱う上での倫理観だと思います。「この技術はどう使われるのか?どう使うべきなのか?」を絶えず問い続けることが大切です。「原爆の父」と呼ばれ、マンハッタン計画のリーダーとして原爆を開発したオッペンハイマーは、原爆実験成功の様子を見ながら「われは死神なり、世界の破壊者なり」というインドの古典『バガヴァッド・ギーター』の一節を引用して、自分の発明を後悔したと伝えられています。漫画でも、永井豪の『マジンガーZ』でも兜十蔵博士が「甲児よ!お前は神にも悪魔にもなれる。世界はお前のものじゃ!」(うろおぼえ)と言ってましたね。

今回は、SF漫画や、漫画以外の本が多めでしたが、いかがだったでしょうか?改めて思うとSF漫画は馬鹿では書けないのがわかります。『銃夢』の木城ゆきと氏からは深い教養が感じられますし、士郎正宗氏の博覧強記ぶりに影響されて、参考文献として挙げられている本はずいぶん読みました。今回触れられませんでしたが、園田健一の『砲神エグザクソン』の科学考証の緻密さに感心したりしました。今回のエッセイを、受験生の皆さんは英作文の対策として参考にしてみてください。近年の埼玉県は「人工知能について」などをテーマに作文させるので、「シンギュラリティ」についても一度考えてみるのはいかがでしょうか。

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