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桶川東口校コラム 漫画で歴史を学ぼう! 第6回『雷火』&『ヘルシング』

漫画で歴史を学ぼう

第6回「雷火」&「ヘルシング」

みなさん、こんにちは。社会と漫画を愛するサイエイDuo桶川東口校の竹下が、日本と世界の歴史をマンガでめぐって行こうという企画の第6回目です。

今回は、生徒から質問への返答編として、「古墳時代」と「宗教改革」という、二つのテーマを取り上げてみたいと思います。というわけでまず一冊目は『雷火』、二冊目は『ヘルシング』という異色の取り組みで語っていきたいと思います。

作品名:『雷火』藤原カムイ(角川書店・2001年・全15巻)

  • 時代区分:3~4世紀の日本(弥生~古墳時代)
  • 学習ポイント:何故、古墳時代の出題が少ないのか

定期試験対策やサイエイの「徹底理社講座」などで、歴史の質問が多くなりました。そのうち何人かに「よくわからない時代ってどこ?」と聞いたところ、「古墳時代がよくわからない」とのこと。彼らの不安を取り除くために、この一冊を選びました。

「雷火」は1988年連載スタートなので、30年前の漫画となります。邪馬台国の女王・卑弥呼の死から、主人公ライカによる、クナ国と邪馬台国の統一。邪馬台国を乗っ取ろうとする魏の役人、張政とライカの対決までが描かれています。30年前の作品といいましたが、当時の最新の学術書などにも目を通しており、藤原カムイの美しい絵の力もあり、なかなか説得力のある邪馬台国が描かれておりました。

面白いところとしては、入試でもよく出題される邪馬台国と魏の交流に対して、南方の大国クナ国は、三国のうち呉の国と同盟を結んでいるという設定。「呉服」という言葉が日本語に残っていたり、納豆など、食文化に共通点が多かったりと、中国の南方との交流は実は頻繁だったと考えられています。クナ国の軍隊にがいるのはやや漫画的だったかな。しかし、春秋戦国時代(紀元前8~3世紀)には中国でも象が戦争に使用されていたらしいので、『キングダム』くらいには時代考証的にもありなのかもしれません。

その他、クコチヒコという朝鮮からの渡来人は当時の最新技術である鉄製の武器を持っており、青銅の剣を真っ二つにする描写は、その威力を読者に教えてくれます。また、邪馬台国の重臣たちの中で唯一中国風の着物を着ている人物が出てきますが、彼は歴史上の人物でナシメ(難升米)です。『魏志倭人伝』(本当はこの呼称には異議がありますが、受験用語として使用しています)で「親魏倭王」の金印を持ち帰った人物とされています。悪役の張政も実在の人物で、ナシメと共に邪馬台国に来た使者ですが、帰国後の記録がないため、この漫画では邪馬台国に居座っているという設定になっています。

という感じで語ってきましたが、この漫画では卑弥呼の後継者の壱与は超能力を使うし、主人公のライカたちは、育ての親の徐福から神仙術という忍術を習っているし、張政やその家臣のイキナメは中国武術や魔術まで使えます。あくまでアクション主体の少年漫画として楽しむ作品です。つまりポイントは「4世紀の日本は何でもあり」ということです。なぜなら、日本にはまだ文献資料がなく、中国との交流は南北朝時代の『宋書』までないからです。南朝の宋の成立が420年、つまり5世紀初頭なので、4世紀の日本で何があったのかはほとんどわからないということになります。

ですから、江戸時代に新井白石が始めたとされる、邪馬台国論争などが起こるわけです。邪馬台国が北九州にあったのか、近畿地方にあったのかの論争はいまだに決定打がありません。この状況を逆手にとって「好き勝手に描ける!」という訳で、漫画は結構あります。「ガンダム」で有名な安彦良和の『ナムジ』『神武』『蚤の王』(これが一番好き)などが有名です。つまり「古墳時代は、資料が少ないため、出題しづらい」ことをおさえておきましょう。今回書いた『宋書倭国伝』中の「倭の五王」の「武」稲荷山古墳の鉄剣と江田船山古墳の鉄刀の両方に記載があるワカタケル(おそらく雄略天皇)だとされることを覚えておきましょう。受験生諸君は、そんなに心配しなくていいですよ。趣味で歴史を扱うには楽しいところですね。

作品名:『ヘルシング』平野耕太(少年画報社・2009年・全10巻)

  • 時代区分:20世紀のイギリス
  • 学習ポイント:宗教改革とキリスト教の主要宗派について

最初に言っておきますと歴史漫画ではありません。今回のような質問対応でないと、まあ取り上げない漫画です。アニメ化もしております。それも二回。マニアなファンが多い作家で現在、連載中の『ドリフターズ』も、死んだはずの歴史上の人物たち(こちらを「漂流者」と呼ぶ)が別世界に集められて、不遇の死を遂げて超能力を持った歴史上の人物(こちらを「廃棄物」と呼ぶ)とバトルする漫画を描いています(ジャンヌダルクが発火能力もってたり、ヒトラーが独裁国家を建国してたりする話です)。こちらについては、いずれ『Fate』といっしょに語れればと思います。

では「ヘルシング」はどんな漫画かというと、吸血鬼が実在する世界という設定で、ひそかに吸血鬼狩りを行うイギリス王室直属の特務機関と、吸血鬼狩りを行うバチカンの特務機関と、ブラジルの奥地に逃れ、半世紀かけて1000体の吸血鬼部隊を作ったナチスの残党の、三つ巴の戦いというストーリーです。褒め言葉として頭が悪い話です。さて、ここでポイントとなるのが、同じ吸血鬼退治の機関なのに「なぜ、バチカンとイギリスの仲が悪いか」です。

まず、入試に必須なキリスト教の三つの宗派についてまとめてみましょう。

キリスト教の三宗派まとめ
宗派 地域・民族 特徴
カトリック(旧教) 南欧(イタリアなど)のラテン語族・南米・北米・アフリカの一部など バチカン市国の元首、ローマ教皇をトップとする宗派で、全世界に約13億人の信者を抱える
キリスト教の最大宗派。
プロテスタント(新教) 西欧(イギリス・ドイツなど)のゲルマン語族・北米・オセアニアなど 16世紀の宗教改革により生まれた、ルター派・カルヴァン派・英国教会などの総称。全世界に約4億人
オーソドックス(正教会) 東欧(ロシアなど)のスラブ語族 東ローマ帝国の流れをくむキリスト教。全世界に約3億人

キリスト教全体では約23億の信者がいるとされていますので、残りの3億人は、エチオピアのコプト教会や、ブッシュ元大統領などが信仰しているキリスト教原理主義派などの諸宗派となります(新しいキリスト教=プロテスタントではありません)。

ルネサンスの三大発明の一つ「活版印刷機」により、それまで高価で時間もかかった本の複製・出版コストが安くなり、ドイツの職人グーテンベルクの発行した聖書はさまざまな階級の人たちに広がっていきます。そうした識字率の向上が宗教改革(1517~)のきっかけとなりました。免罪符(=「贖宥状」。買うと誰でも天国に行けるとされたお札)の発行など、堕落していたカトリックに対する反抗運動でした。

その結果、主に西ヨーロッパで誕生した新しいキリスト教の諸宗派を総称してプロテスタントと呼びます。ドイツのルター派、スイスからフランスやオランダに広がったカルヴァン派などが有名です。そして少し遅れてイギリスでは、国王ヘンリー8世が英国教会としてカトリックから独立します。ヘンリー8世が英国教会を創設した理由は新しい奥さんが欲しかったから(カトリックは離婚を禁止していたため)で、そこら辺の詳しいいきさつは、ハロルド作石の『七人のシェイクスピア』で描かれています。

また、カトリックに弾圧されて消えてしまった宗派としては、イタリアのフィレンツェの改革運動家サヴォナローラや、チェコのヤン・フスのフス派などもありました。サヴォナローラについては惣領冬実の『チェーザレ 破壊の創造者』が、フス派については、大西巷一の『乙女戦争 ディーヴチー・ヴァールカ』が詳しいですが、どちらも高校入試レベルでは出題のない内容ですので、高校に進学してから読んでも大丈夫です。

カトリックとプロテスタントの対立が頂点に達したのが1618年から始まった三十年戦争です。ドイツを主戦場に、カトリック側の神聖ローマ帝国軍と、プロテスタントのドイツ諸侯やスウェーデン軍、カトリックなのにドイツ諸侯を応援するフランス軍などが入り乱れて、ドイツ人口が三分の一に減少したとされる大戦争でした。この戦争をあつかった作品としては真刈信二の『イサック』なんかが面白いですし、三浦健太郎の『ベルセルク』も三十年戦争の英雄「鉄腕ゲッツ」(ゲーテの戯曲『ゲッツ・フォン・ベルリヒンゲン』のモデル)から主人公の造形やストーリーの一部を拝借しています。その後大学入試必修のヴェストファーレン条約(1648)で戦争は終結しますが、カトリックとプロテスタントの対立は続いていきます。

つまり同じキリスト教なのですがカトリックとプロテスタントは仲が悪いことを絶対に覚えましょう。

「ヘルシング」は漫画的なデフォルメがきつめですが、そこがよく描かれています。物語前半、主人公のアーカードは北アイルランドに派遣されます。イギリスは大まかにイングランド・スコットランド・ウェールズ・北アイルランドの四つから成り立っています。その中で北アイルランドはカトリック信者が多い地域となります。ですからバチカンも同時にヴァンパイア・ハンターを派遣し、吸血鬼をあっさり退治した後、二つの組織で戦闘が始まります。

主人公アーカードに匹敵するバチカンのハンターがアンデルセン神父で、彼の所属する「イスカリオテ機関」というのがバチカンの不祥事を秘密裏に処理するため、聖職者なのに殺人鬼や暗殺者を抱えているという宗教に大らかな、日本でないと描けない設定の組織で、単行本にはスピン・アウトとしてイスカリオテ機関のメンバーがイスラムのテロ集団を皆殺しにしたり、第二次大戦中にナチスに協力していたカトリックの司教を暗殺したりとやりたい放題です。

作品では最終的に、ナチ残党のロンドン・テロに便乗する形で、バチカンが十字軍を発動して吸血鬼・人間を無差別に虐殺する展開になります。もちろん漫画ですが、潜在的にカトリックは失った支配権を取り戻したい気持ちを持っているのが味わえます。

高校入試的には、減少した信者を獲得するための海外布教組織としてカトリックがイエズス会を設立したこと(イエズス会の創始者は、イグナティウス・ロヨラとフランシスコ・ザビエルです)。おかげで南米などでカトリックは信者を獲得しましたが、布教を嫌う東アジアでは弾圧も受けました。特に日本では鎖国に際し、布教に関心がないプロテスタントのオランダだけが西欧向け貿易を許可されたこと。の二点を覚えておきましょう。

今回は変則的にテーマを二つにし、「ヘルシング」という、歴史漫画でない作品を取り上げてみました。「どうしても、カトリックとプロテスタントの関係がごっちゃになる」という人への最終的な処方箋としておススメです。特別講座などでお会いする皆さんも、リクエストなどありましたら、各校舎の先生方を通じてご連絡くれれば、出来る限り応えていきたいと思います。

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